あどなんぼだ?

先週のある日のお話です
お昼時も過ぎた午後
二人の年配のおじさんたちが来店しました
一人のおじさんが「中華（そば）」と注文し席に着きます
中華そばを待つ間も、それを食べている間も
二人のあいだに会話はなく、そればかりか
一人のおじさんは食べ終わるとそそくさと車へ
残ったおじさん（ここからは敬愛を込めておどさまとします）
「なんぼだ?」と尋ねます
「1240円です」とカミさん
するとおどさまはがま口型の財布からまず1200円を
テーブルの上に置きました
ここでまた「あどなんぼだ?」と聞いてきます
「あとよんじゅ～えん!」と少しだけ大きな声でカミさん
「50円玉あったんだいなぁ」と財布の中をまさぐり
テーブルの上に1円玉を一枚ずつ並べるおどさま
ここでまた「あどなんぼだ?」と聞いてきます
「あとよんじゅ～えん!　とうさん、それ1円玉だよ」
そんなことはお構いなしに4円を並べ終え
「あどなんぼだ?」とまたまたおどさま
ここでカミさんは「とうさん、財布さ100円玉入ってらよ」と言うと
おどさまはようやく100円玉を取り出し
60円のお釣りを手渡すことができました
するとこのおどさま
「ここさ青森から来てら父さんいだべ?達者でらが?」と言うので
僕は亡くなった父の事だとすぐ判断し
「33年前に亡ぐなったよ。オラ、その息子だ」と教えてあげると
「はぁ、そうかい。オラ長生きし過ぎだなぁ。もう95歳だ」
「えっ～!」僕ら二人がびっくりしたのは言うまでもありません
そうして、自分の若い頃の話をひとしきり教え
おどさまは車に乗せられて帰って行きました

店の側に咲くヤマオダマキ

施設に入所しているというおどさま

また来てくれるかな