2022年6月7日火曜日

職 人

去年の秋のお話です
この年最後の雛岳登山から戻って登山靴を洗っていると
革の縫製がほつれて
ぱっくりと開いている箇所がありました
「もう何年も履いているもんな」そう思いながらも
修理できればと、自宅に持って帰っていました
店を閉めた秋のちょっとした時間を使って
市内で修理できるお店がないか探してみると
「米田製靴店」という名のお店を見つけます
「製靴するくらいの店だったら直してけるべが」と
そのお店に出向いてみました
何度目かのタッチでようやく開いた自動ドア
店の中に入ると
壁やスチール棚に飾られたおびただしい数の靴たちが
婦人靴、紳士靴、子供用のズックやサンダルなどが
所せましときれいに並んでいました
店の一角には
靴の修理などに使われると思われるスペースがあり
いろんな道具が雑多に配置されていました
すると店の奥から年配のオヤジさんが出てきました
「こちらで靴の修理してもらえますか?登山靴なんだけど」 
「どれ、持って来いへ」とオヤジさん
登山靴を見せると
「うん、やっておくはんで明日取りに来いへ」との返事
「ほんと? せば明日取りに来ます。
ちなみにいくら位になります?」そう尋ねると
「んだなぁ~、千円(正確な返事はせんいぇん)」
「えっ!?」あまりの安さに少しびっくりした僕ですが
登山靴をオヤジさんに預けて戻りました
翌日、再びなかなか開かない自動ドアを開け店内に入ると
くだんのオヤジさんが僕の登山靴を手に出てきて
「いやぁ、革硬くて針通らねくて大変だったじゃ」
「んでしょ。登山靴は革厚いもんね」と僕
「これだば、千円の仕事でねぇな」とオヤジさん
「んだよね。大変だったべ? へばいくら?」尋ねると
オヤジさんは間髪入れずに
「せんいぇん!」そうきっぱりと言い切りました
「いいんだが?」
「あぁ、いいよ」
僕はオヤジさんに千円を渡して
「またなんかあったら持ってくるはんで」
そう言い残して店をでました
以前にはソールが剥がれて
関東のショップで修理してもらった登山靴
 こちらが右足の登山靴の縫製箇所
こちらが修理してもらった左足の登山靴
きれいに縫製されています
オイルが塗られ雛岳登山に行くのを待つ
 
年の頃は70代中盤過ぎほどのオヤジさん
会話の端々に仕事への自負が滲み
その作業場には年季を感じさせられました
たった二度、店を訪れただけですが
職人の仕事に触れたようで嬉しくなり
いつかこのブログで紹介したいと思っていたのです
僕は年配の職人が好きなもんで
 
雨に濡れるレンゲツツジ
今日の箒場の辺りの日中の気温は8~9℃程
しびれるくらいの寒さでした
早く天気が回復してくれるといいね




 


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