去年の秋のお話です
この年最後の雛岳登山から戻って登山靴を洗っていると
革の縫製がほつれて
ぱっくりと開いている箇所がありました
「もう何年も履いているもんな」そう思いながらも
修理できればと、自宅に持って帰っていました
店を閉めた秋のちょっとした時間を使って
市内で修理できるお店がないか探してみると
「米田製靴店」という名のお店を見つけます
「製靴するくらいの店だったら直してけるべが」と
そのお店に出向いてみました
何度目かのタッチでようやく開いた自動ドア
店の中に入ると
壁やスチール棚に飾られたおびただしい数の靴たちが
婦人靴、紳士靴、子供用のズックやサンダルなどが
所せましときれいに並んでいました
店の一角には
靴の修理などに使われると思われるスペースがあり
いろんな道具が雑多に配置されていました
すると店の奥から年配のオヤジさんが出てきました
「こちらで靴の修理してもらえますか?登山靴なんだけど」
「どれ、持って来いへ」とオヤジさん
登山靴を見せると
「うん、やっておくはんで明日取りに来いへ」との返事
「ほんと? せば明日取りに来ます。
ちなみにいくら位になります?」そう尋ねると
「んだなぁ~、千円(正確な返事はせんいぇん)」
「えっ!?」あまりの安さに少しびっくりした僕ですが
登山靴をオヤジさんに預けて戻りました
翌日、再びなかなか開かない自動ドアを開け店内に入ると
くだんのオヤジさんが僕の登山靴を手に出てきて
「いやぁ、革硬くて針通らねくて大変だったじゃ」
「んでしょ。登山靴は革厚いもんね」と僕
「これだば、千円の仕事でねぇな」とオヤジさん
「んだよね。大変だったべ? へばいくら?」尋ねると
オヤジさんは間髪入れずに
「せんいぇん!」そうきっぱりと言い切りました
「いいんだが?」
「あぁ、いいよ」
僕はオヤジさんに千円を渡して
「またなんかあったら持ってくるはんで」
そう言い残して店をでました
こちらが右足の登山靴の縫製箇所
こちらが修理してもらった左足の登山靴
きれいに縫製されています
オイルが塗られ雛岳登山に行くのを待つ
年の頃は70代中盤過ぎほどのオヤジさん
会話の端々に仕事への自負が滲み
その作業場には年季を感じさせられました
たった二度、店を訪れただけですが
職人の仕事に触れたようで嬉しくなり
いつかこのブログで紹介したいと思っていたのです
僕は年配の職人が好きなもんで
今日の箒場の辺りの日中の気温は8~9℃程
しびれるくらいの寒さでした
早く天気が回復してくれるといいね
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